判例・事例紹介
従業員が通勤途中にマイカーで交通事故を起こした場合の会社の責任
従業員が通勤途中に従業員所有のマイカーにより交通事故を起こしてしまった場合の使用者の責任について検討します。
従業員が、人身事故を起こしてしまい被害者の方が死亡や後遺症を負われるような大きな事故となってしまった場合、賠償額はときに何千万円にもなってしまいます。これを会社が負担することになるのかどうかは会社にとって非常に大きな問題です。
交通事故の被害者が、会社に対して責任を追及する際の法的根拠としては使用者責任(民法715条)又は運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)が考えられますが、どのような場合に使用者の責任が認められているのかについて検討してみたいと思います。
1 裁判例のご紹介
(1)純粋通勤使用・会社無関与型
マイカーが会社の業務には一切使用されず、純粋に通勤に使用されており、会社がマイカー通勤に関与していなかった場合についての裁判例をみてみましょう。
会社の責任を否定(東京高裁昭和48年11月29日判決)
● 従業員が通勤のためだけにマイカーを使用
● 仕事帰りに事故を起こしたが、会社がマイカー通勤を認容、放任なし
⇒会社の責任を否定
会社の責任を否定(東京地裁昭和42年11月29日判決)
● 通勤のためだけにマイカーを使用
● マイカー通勤について会社の了承を受けていない
⇒通勤中はもはや使用者の指揮命令による支配を離脱しているとし、会社の責任を否定
会社の責任を否定(最高裁昭和52年9月22日判決)
● 従業員が自家用車を用いて出張に行き、その帰途、交通事故
● 会社では、自家用車を利用して通勤を禁止し、利用する場合は会社の許可を得るように指示あり、
従業員は、同事実を熟知していたが許可を得ず運転
● 会社の業務に関して自家用車を使用歴なし
⇒会社の責任を否定
(2)純粋通勤使用・会社関与型
次に、マイカーが純粋に通勤に使用されていたが、会社がマイカー通勤に関与していた場合についての裁判例です。
会社の責任を肯定(最高裁平成元年6月6日判決)
● 従業員がマイカー通勤を会社は黙認し、駐車場も使用させていた
⇒仕事帰りに事故を起こした事故につき、会社の責任を肯定
会社の責任を肯定(福岡地裁平成10年8月5日)
● 会社はマイカー通勤を前提にした通勤手当を支給することにより積極的にマイカー通勤を容認
⇒通勤途中に事故について安全運転に努めるよう指導・教育すべき指導監督義務があったとして
会社の責任を肯定
会社の責任を否定(鹿児島地裁昭和53年10月26日)
● 従業員が通勤のためだけにマイカーを使用しており、会社が借りた駐車場に駐車していたが、
駐車料金は利用者が各自負担
● 会社が燃料費や維持費も負担していなかった
⇒通勤途中に事故につき会社の責任を否定
会社の責任を否定(広島高裁平成14年10月30日)
● 会社が自動車通勤者のために必要な駐車場を確保
● 一方、交通安全週間などには従業員にチラシを配布する等して交通安全意識の向上を図る
● 4キロ以内というバス通勤手当もでない距離で専ら個人的な便宜のためにマイカー通勤をしていた
⇒通勤途中の交通事故につき、会社の責任を否定
(3)業務使用型:従業員のマイカーが会社業務にも使用されていた裁判例
会社の責任を肯定(大阪地裁昭和42年6月30日判決)
● 従業員のマイカーが会社の荷物運送のために利用することあり
● 会社は従業員のマイカーの維持費、修理費等の運行費を負担
⇒従業員の帰宅途中の事故について、会社の責任を肯定
会社の責任を肯定(最高裁昭和52年12月22日判決)
● マイカーが会社の指示で業務場から業務場への移動や他の従業員の運搬などにも使用
● 会社はこれを承認した上で、ガソリン手当などの手当を支給
⇒会社の責任を肯定
2 ポイント
👉純粋通勤使用・会社無関与型では、裁判例は会社の責任を否定する傾向
👉純粋通勤使用・会社関与型では、会社がマイカー通勤を認めているような場合は、原則として
会社は責任を負う
👉業務使用型では、会社の責任はほぼ間違いなく肯定
3 会社がとるべき対策
● マイカー通勤を認めない場合
👉使用を黙認しない
👉使用禁止を形に残るよう文書で周知徹底
👉駐車場の提供やマイカー通勤手当、ガソリン代などは支払わないことで
会社の態度を明確にする必要
● マイカー通勤を認める場合
👉原則として会社の責任は免れない
👉普段から安全運転を意識づける等して会社の監督責任を果たすと同時に、
会社の業務にマイカーを使用することは控える
👉万が一の事故ときに備えて、保険に加入させる
👉必要に応じて規定の整備
具体的な対策や運用についてお困りの場合は、お気軽にお問合せ下さい。