判例・事例紹介
休業損害等の消極損害の範囲
Q1.交通事故で怪我をして入院が必要となり、入院中は会社を休まざるを得なくなりました。入院中の給
料は加害者に対して請求できますか。
A. このように入院中に失った収入等は休業損害といい消極損害の典型例として賠償請求することが可
能です。請求できる額は一日あたりの給与額(収入日額)を仕事を休まざるを得なくなった日数を掛け
あわせて算出するのが一般的であり、収入日額は、ある期間(たとえば事故前3か月)の給与総額を
期間の総日数で除して算出することが通常です。
Q2.交通事故で負った怪我が原因で会社を退職せざるを得なくなりました。怪我は完治する予定です
が、就職までは時間がかかります。この場合、休業損害は請求できるのでしょうか。
A.交通事故で負った怪我が原因で退職を余儀なくされたり解雇されたりした場合であっても、実際に労働
困難な期間のうち合理的と考えられる期間については、休業損害を請求することは可能です。また就
労可能となった後であっても、就職先を探すために時間がかかることがありますが、の場合あっても、
実際に就労先が見つかるまでの期間あるいは就職先を得るための必要な相当期間のいずれか短期
の期間について休業損害を請求することができます。
Q3.交通事故により残念ながら後遺障害が残ってしまいました。今までやっていた仕事もできなくなり転
職しなければならず、給料も減る予定です。この場合、加害者に対してどのような請求ができるので
しょうか。
A.後遺症が残ってしまった場合、その分、労働能力が喪失されていると考えられますので、就労可能年
齢(67歳)までの期間(労働能力喪失期間)について、労働能力が喪失されていることにより減った収
入を逸失利益として損害賠償請求することができます。もっとも、将来得られたであろう給料を現時点
で請求するという側面があるので、中間利息が控除された額を請求することになります。具体的な計
算式は、「基礎収入(年収)×労働能力喪失率×喪失期間に対応する係数(ライプニッツ係数と呼ば
れ、この係数は就労可能期間と中間利息の利率から導かれるものです)」で表すことができます。
Q4.労働能力喪失率とはどのようにして算定されるのでしょうか。
A.労働能力喪失率は自賠責保険により認定された後遺障害等級ごとにその割合が定められており、通
常はその割合どおりの喪失率が認められることになります。例えば両眼の失明は後遺障害等級1級と
されており労働能力喪失率は100%であり、いわゆるむちうち症で医学的に説明可能なものは14級
とされており労働能力喪失率は5%とされています。
Q5.労働能力喪失期間については就労可能年数の67歳までの期間が常に認められるのでしょうか。
A.常に認められるわけではありません。例えば、いわゆるむち打ち症の場合は、自覚症状を主体とする
後遺障害であるため、67歳までの喪失期間を認めず後遺障害等級が14級の場合は2年から5年、
12級の場合は5年から10年に限定されることが多いですし、非器質的な精神障害(身体に対する物
理的な損傷を直接の原因としない精神障害)については、治癒する可能性があるため、その症状に応
じて労働能力喪失期間が限定されることがあります。